ECサイトを訪れたユーザーが、商品を購入したり会員登録したりせずに離脱することは少なくありません。購入に至らなかったユーザーをリードとして獲得し、離脱後もメールを通じて継続的に情報を届けられます。
代表的なメールアドレス収集方法の一つが、メールポップアップフォームです。割引や限定情報などの特典とともにフォームを表示することで、ユーザーに登録を促せます。
本記事では、メールポップアップフォームの概要や効果、企業事例とともに、設置方法や公開後の改善ポイント、作成方法を解説します。

メールポップアップフォームとは
メールポップアップフォームとは、ECサイトなどを閲覧しているユーザーの画面上に表示され、メールアドレスの入力を促すフォームのことです。多くの場合、メルマガへの登録と引き換えに、割引クーポンや送料無料、限定商品の先行案内などの特典を提供します。
取得したメールアドレスは、商品情報やキャンペーンの案内をはじめ、登録後の案内メール(ウェルカムメール)などの配信にも活用できます。
ポップアップの大きさや表示位置はさまざまで、画面の中央に大きく表示されるものもあれば、ページの端や下部に小さく表示されるものもあります。表示するタイミングによっては、ユーザーの商品閲覧や購入を妨げる可能性があります。サイトの目的やユーザーの行動に合わせて、フォームの形式や表示条件を選ぶことが重要です。
メールポップアップフォームの主な種類
- 時間経過型:ユーザーがサイトを訪問してから、一定時間が経過した後に表示する
- スクロール型:ユーザーがページを一定の位置まで読み進めた際に表示する
- クリック型:ボタンや画像など、指定した要素がクリックされた際に表示する
- 離脱防止型:ユーザーがページから離脱しようとしたタイミングで表示する

メールポップアップフォームが効果的な理由
購入しなかったユーザーとも接点を持てる
メールポップアップフォームを活用すれば、メールアドレスを取得し、サイトから離脱したユーザーとも継続的な接点を持つことができます。
Wisepops(ワイズポップス)の調査(英語)によると、同社のサービスを通じて表示された10億回以上のポップアップを分析した結果、2026年のメール登録用ポップアップの平均コンバージョン率は4.82%、EC業界では6.88%となりました。EC業界では全体平均を上回る結果となっています。
取得したメールアドレス宛てに、登録後の案内メールや新商品、キャンペーンなどの情報を配信することで、潜在顧客に継続的にアプローチできます。また、ECサイトへの再訪や商品の購入を促すことで、新規顧客獲得につなげることも可能です。
自社でユーザーデータを蓄積できる
メールポップアップフォームでは、ユーザーの同意を得たうえで、メールアドレスなどの情報を直接収集できます。近年は、プライバシー保護の強化などを背景に、外部サービスから取得できるユーザーデータの活用がしにくくなっています。そのため、自社で管理するファーストパーティデータを蓄積できる点がメリットです。
さらに、興味のある商品や購入目的などをユーザー自身に回答してもらえば、ゼロパーティデータの収集にも活用できます。こうした情報を顧客データ戦略に取り入れることで、顧客ニーズの把握やマーケティング施策の改善、顧客体験の向上につなげられます。
顧客に合わせた情報を配信できる
フォームで取得した情報をもとに登録者を分類すれば、それぞれの関心に合った商品やキャンペーンを案内できます。回答内容に加え、閲覧した商品や居住地域、過去の購入履歴などに応じて、配信内容をパーソナライズすることが可能です。
すべての登録者に同じメールを送るのではなく、一人ひとりに関連性の高い情報を届けることで、商品やキャンペーンに興味を持ってもらいやすくなります。
メールポップアップフォームの例
1. 土屋鞄製造所:登録後に届く情報を具体的に伝える
革製品ブランドの土屋鞄製造所は、メルマガ登録を促すポップアップフォームで、登録後に受け取れる情報を具体的に伝えています。
ポップアップでは、メルマガ会員限定のオリジナルの読み物をはじめ、新製品やイベントの情報などを届けることを案内しています。単に「最新情報を配信します」と伝えるのではなく、配信内容を具体的に示すことで、ユーザーが登録するメリットを判断しやすい設計です。
入力項目はメールアドレスのみで、プライバシーポリシーへの同意欄も設けられています。登録後に得られるメリットを明確にしながら、入力の負担を抑えている事例です。
2. Baby's all right:閲覧を妨げにくい位置に表示する
渋谷のセレクトショップBaby's all right(ベイビーズオールライト)は、メールポップアップフォームを画面の中央ではなく、右下に小さく表示しています。
画面全体を覆わないため、ユーザーは商品やコンテンツを閲覧しながら、必要に応じてフォームへ入力できます。登録を促す導線を確保しつつ、閲覧を妨げにくい配置です。
フォームの入力項目はメールアドレスのみで、案内文もブランドの最新情報を届けるという簡潔な内容です。表示する情報量と入力の負担を抑え、ストアの閲覧体験に配慮している事例です。
3. CYCLISM:割引特典と継続的なメリットを示す
海外のサイクリングウェアなどを取り扱うCYCLISM(サイクリズム)は、「Get 10% Off」と書かれたボタンを表示し、割引に関心を持ったユーザーをメール登録フォームへ誘導しています。
フォームでは、初回購入時に2万5,000円以上の注文で利用できる10%OFFクーポンコードを提供することを案内しています。割引率だけでなく最低購入金額などの条件もあらかじめ示しているため、登録後に「想定していた特典と違った」と感じる状況を防ぎやすくなります。
さらに、新商品の発売やイベント、限定商品、特別セールに関する情報も配信すると伝えています。割引を登録のきっかけにしながら、その後もメールを購読するメリットを示すことで、クーポンの取得だけを目的とした登録にならないよう工夫している事例です。

メールポップアップフォームの効果的な設置方法
1. 表示対象とタイミングを調整する
訪問直後にポップアップを表示すると、ユーザーが商品やブランドを理解する前に入力を求めることになり、閲覧の妨げになる場合があります。滞在時間やスクロール位置、閲覧ページ、離脱しようとする動きなどを基準に、関心が高まった段階で表示しましょう。
初回訪問者やリピーター、閲覧している商品カテゴリー、購入履歴などに応じて、表示内容を変えることも効果的です。例えば、初回訪問者には初回購入割引を提示し、リピーターには「再訪ありがとうございます」といったメッセージや、閲覧している商品カテゴリーに関連する特典を案内できます。
2. 特典と登録するメリットを明確に伝える
メールアドレスを入力してもらうには、登録によって得られるメリットを明確に伝えることが重要です。初回購入割引や送料無料、新商品の先行案内、会員限定商品など、登録の動機となる特典を提示しましょう。
見出しには、「登録で初回購入10%OFF」のように、得られる特典を具体的に示します。説明文には、配信する情報や特典の利用条件などを簡潔に記載しましょう。登録ボタンにも「10%OFFを受け取る」などの文言を使用すると、クリックを促しやすくなります。
割引を提供する場合は、利益率やブランドイメージとのバランスも考慮しましょう。対象商品や利用期限、最低購入金額を設定し、値引きの範囲をコントロールする方法があります。
3. 取得する情報を適切に選ぶ
メールアドレスだけで施策を実施できる場合は、入力項目を増やしすぎないようにします。氏名や生年月日、興味のある商品などを尋ねる場合は、取得した情報をどのように活用するのかをあらかじめ決めておきましょう。
メールアドレス以外の情報が必要な場合は、選択式の質問を使用したり、フォームを複数のステップに分けたりする方法があります。必要な情報を一度に入力させず、登録完了までの負担を抑えられる流れを設計することが重要です。
4. 画面を覆いすぎないデザインにする
ポップアップにはブランドイメージに合った色や画像を使用し、特典と入力欄がひと目で分かるデザインを採用しましょう。ただし、画面全体を覆う大きなポップアップは、商品情報の閲覧やサイトの操作を妨げる可能性があります。
特にスマートフォンでは、入力欄や登録ボタンが画面内に収まるかを確認してください。キーボードを表示した際にボタンが隠れないか、片手でも問題なく操作できるかなどを確認しましょう。
5. 閉じるボタンと表示頻度を調整する
登録を希望しないユーザーがすぐに閲覧へ戻れるよう、見つけやすい位置に閉じるボタンを設置します。ボタンを小さくしたり、背景と見分けにくい色にしたりすると、操作性を損ない、サイトからの離脱につながる可能性があります。
一度閉じたユーザーに同じポップアップを繰り返し表示することも避けましょう。登録済みのユーザーには表示しない設定にし、未登録者にも一定期間空けて再表示することで、必要以上の表示を防げます。

メールポップアップフォーム公開後の改善ポイント
1. 改善の基準となる指標を決める
公開後の効果を正しく判断するには、あらかじめ確認する指標を決めておくことが重要です。まずは、利用するツールで取得できる表示回数、登録数、登録率、ポップアップを閉じた割合などから、施策に合った指標を選びましょう。
登録数だけを見ても、サイトへの訪問者が増えたことで登録が増えたのか、ポップアップの改善によって成果が上がったのか判断できません。一定期間ごとに同じ指標の推移を確認することで、施策の効果を把握できます。
2. ページやデバイスごとに成果を比較する
改善箇所を見つけるため、商品ページや商品カテゴリー、使用デバイスなどに分けて成果を比較しましょう。サイト全体の登録率が低くても、特定の商品ページやデバイスでは高い成果が出ている場合があります。
成果の高いページでは、ユーザーの関心と特典の内容が合っていると考えられます。一方、表示回数が多いにもかかわらず登録率が低いページは、訪問目的と案内内容が一致していない可能性があるため、表示対象や訴求内容の見直しが必要です。
3. A/Bテストでは一つの要素を変更する
変更の効果を正確に判断するには、A/Bテストで変更する要素を一つに絞ります。特典や見出し、画像、ボタンの文言、表示タイミングなどを同時に変えると、どの変更が結果に影響したのか分かりにくくなります。
短期間の結果だけで判断せず、一定数の表示と登録が集まるまで検証を続けることも大切です。成果の高かった内容を採用したうえで別の要素を検証すれば、根拠に基づいた改善を積み重ねられます。
4. 登録後の行動まで確認する
施策の最終的な効果は、登録数だけでなく、その後の顧客行動まで含めて判断する必要があります。登録率が高くても、メールが開封されなかったり、クーポンが利用されなかったりすれば、十分な成果につながっているとはいえません。
メールの開封率やクリック率、クーポン利用率、購入率、登録解除率まで確認しましょう。登録後の再訪や購入につながっていない場合は、配信内容や特典の利用条件などを見直すことが重要です。
Shopifyでは、Shopify Messaging(ショッピファイメッセージング)を利用することで、メールの開封率やクリック率、配信停止率、メール経由の注文数や売上を確認できます。

メールポップアップフォームを作成する方法
メールポップアップフォームは、フォーム作成ツールやメールマーケティングツールを利用して作成できます。利用するツールでポップアップ形式を選択し、登録フォームを作成するのが一般的な方法です。
Shopifyを利用している場合は、Shopify App Store(ショッピファイアプリストア)で提供されているアプリから作成できます。主なアプリは次のとおりです。
- Shopify Forms(ショッピファイフォームズ):Shopifyが提供する無料のフォーム作成アプリです。ポップアップフォームとインラインフォームを作成できます。
- Klaviyo(クラビヨ):登録フォームの作成に加え、メールやSMS(ショートメッセージサービス)の配信と自動化にも対応しています。
- Privy(プリヴィ):メールアドレスや電話番号を収集するポップアップフォームを作成し、メールやSMSの配信に活用できるアプリです。
使用するツールを選んだら、フォームの見出しや説明文、入力項目、登録ボタン、登録後に表示するメッセージなどを設定します。続いて、デザインや表示するページ、デバイス、タイミング、頻度などの条件を調整しましょう。
最後に、パソコンとスマートフォンでフォームの表示を確認し、入力した情報が正しく登録されるかをテストしてから公開します。
まとめ
メールポップアップフォームは、ECサイトを離脱したユーザーとの接点を確保し、新規顧客獲得につなげるための有効な手段です。成果を高めるには、登録特典を明確にしたうえで、ユーザーの行動に合わせて表示する対象やタイミングを調整する必要があります。
公開後は登録率だけでなく、メールの開封率やクーポン利用率、購入率などのコンバージョン率も確認し、継続的に改善しましょう。フォーム作成ツールやメールマーケティングツールを活用すれば、目的に合わせてデザインや表示条件を調整できます。 まずは自社の目的に合ったフォームを設置し、顧客との継続的な関係づくりに活用してみてください。
メールポップアップフォームに関するよくある質問
メールポップアップフォームとは?
メールポップアップフォームとは、ECサイトなどを閲覧しているユーザーの画面上に表示され、メールアドレスの入力を促すフォームのことです。
メールポップアップフォームの主な種類は?
- 時間経過型
- スクロール型
- クリック型
- 離脱防止型
メールポップアップフォームを活用するメリットは?
- 商品を購入せずに離脱するユーザーとも継続的な接点を持てる
- メールアドレスなどのユーザーデータを自社で収集、蓄積できる
- 新商品やキャンペーンを案内し、ECサイトへの再訪を促せる
- 顧客の関心や属性に合わせて、配信内容をパーソナライズできる
- 潜在顧客に継続的にアプローチし、新規顧客獲得につなげられる
メールポップアップフォームで取得する情報はメールアドレスだけでいい?
メール配信のみが目的であれば、メールアドレスだけでも十分です。配信内容をパーソナライズしたい場合は、興味のある商品や居住地域、購入目的などを追加で尋ねる方法があります。ただし、入力項目が増えるほど負担も大きくなるため、活用目的が明確な情報に絞りましょう。
Shopifyでメールポップアップフォームを作成できる?
Shopify App Store(ショッピファイアプリストア)で提供されているフォーム作成アプリを利用すれば作成できます。アプリによって、フォームの入力項目やデザイン、表示するページ、デバイス、タイミングなどを設定できます。




