ECサイトでは、顧客に合った提案や配信が購入体験を左右します。しかし、第三者によるCookieの利用制限や、日本の個人情報保護法による規律によって、顧客データの収集は難しくなっています。株式会社イルグルムが実施した「WebのCookie規制対策に関する実態調査」でも、担当者の65.4%が対策に障壁を感じたと回答しています。
そこで重要なのが、好みや購入意向を直接収集するゼロパーティデータです。行動履歴では分からない希望を施策に反映し、提案や配信の精度を高められます。
本記事では、ゼロパーティデータの特徴や収集方法を、ファーストパーティデータとの違いとともに解説します。具体的な使用例やデータ活用時の注意点、Shopify(ショッピファイ)の関連ツールについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

ゼロパーティデータとは
ゼロパーティデータとは、顧客が企業やブランドに対して、意図的かつ自発的に提供する情報です。
例えば、アパレルECの診断コンテンツで顧客に好きなサイズや色を回答してもらった場合、その回答はゼロパーティデータに該当します。顧客本人から提供されるため、企業は行動履歴だけでは判断しにくいニーズや購入意向を直接把握できます。
収集した情報をもとに、一人ひとりの希望に合った商品や情報を提案できることも特徴です。画一的な内容ではなく、顧客の関心に合わせた訴求が可能になるため、顧客体験やマーケティング施策の改善につながります。また、顧客が伝えた好みや希望を実際のサービスに反映することで、自分の意思が尊重されていると感じてもらいやすくなり、企業への信頼向上も期待できます。
ゼロパーティデータの例
- 配信設定画面で選択したセール、新商品、イベントなどの案内の種類と配信頻度
- アンケートやクイズへの回答
- 商品やサービスに関するご意見、ご要望フォームへの回答
- SNS上で顧客が投稿した意見や要望
- チャットボットに入力した内容
- メールや電話、問い合わせフォームで顧客が伝えた内容
ゼロパーティデータの収集方法
- ウェブサイトやLINE(ライン)、SNSでアンケートや投票を実施する
- 商品診断やクイズ、アンケート形式のゲームなど、楽しみながら参加できるコンテンツを提供する
- 購入後アンケートで満足度や改善点を聞く
- 会員登録やプロフィール設定で、興味のある商品や購入目的を入力してもらう
- メール設定で、希望する配信内容や頻度を選んでもらう
- ロイヤルティプログラムを通じて、特典を提供しながら好みや購入意向を回答してもらう
- チャットボットやカスタマーサポートで、希望や悩みを聞き取る

ファーストパーティデータとは
ファーストパーティデータとは、企業が自社のウェブサイトやECサイト、アプリ、実店舗などの顧客接点を通じて、直接収集する情報です。閲覧履歴や購入履歴、メールの開封履歴、会員情報などが該当します。
自社のサービスを利用した顧客から得られるため、顧客の行動や関心を把握するのに役立ちます。収集したデータは、顧客分析、広告やメール配信の対象者選定、商品提案などに活用できます。関心を持つ可能性が高い顧客へ情報を届けることで、マーケティング費用の無駄を抑え、施策の効率を高めることが可能です。
例えば、特定の商品カテゴリーを閲覧した顧客に関連商品を紹介したり、過去に購入した商品に合わせて再購入を案内したりすることで、パーソナライズされた顧客体験を提供できます。
ファーストパーティデータの例
- ECサイトの閲覧、検索履歴
- 商品の購入履歴
- カートやお気に入りへの追加履歴
- 会員登録時に入力された氏名、メールアドレス、住所などの基本情報
- メルマガの登録、開封、クリック履歴
- アプリの利用履歴
- 実店舗での購入履歴
- ポイントプログラムの利用履歴
ファーストパーティデータの収集方法
- ウェブ解析を通じて、閲覧ページやサイト内の検索内容を把握する
- 注文、決済システムから、購入商品や注文金額などの情報を取得する
- 会員登録や再入荷通知のフォームに、顧客情報を入力してもらう
- メールやSMSの配信ツールを使い、開封やクリックなどの反応を確認する
- 公式アプリから、閲覧ページや機能の利用状況を収集する
- POSシステムに、実店舗での購入内容を蓄積する
- ポイントプログラムで、ポイントの獲得、利用履歴を管理する
- カスタマーサポートに寄せられた問い合わせの日時や対応履歴を保存する

ゼロパーティデータとファーストパーティデータの違い
ゼロパーティデータとファーストパーティデータの最も大きな違いは、顧客から情報を得る方法にあります。ゼロパーティデータは顧客が自らの意思で企業に提供した情報で、ファーストパーティデータは自社のウェブサイトやアプリ、実店舗などのチャネルを通じて、企業が顧客から直接収集した情報です。
例えば、顧客がアンケートで「青色の商品が好き」と回答した場合はゼロパーティデータ、青色の商品を繰り返し閲覧、購入した履歴はファーストパーティデータに該当します。前者からは顧客の希望や意図を、後者からは実際の行動を把握できます。
両者の具体的な違いは、以下のとおりです。
- 取得方法:ゼロパーティデータは顧客が意図的に提供し、ファーストパーティデータは企業が顧客の行動ややり取りから収集する
- 情報の内容:ゼロパーティデータには好みや関心、悩み、購入意向などが含まれ、ファーストパーティデータには閲覧、購入、メールへの反応などの履歴が含まれる
- 主な収集元:ゼロパーティデータはアンケートや商品診断、フィードバックフォームなどから、ファーストパーティデータはECサイトやアプリ、メール配信ツール、実店舗などから収集する
- 主な活用方法:ゼロパーティデータは顧客の希望に合った商品提案や配信内容の調整に、ファーストパーティデータは顧客分析や顧客層の分類、行動予測などに活用できる
- 把握できること:ゼロパーティデータからは顧客が望んでいることを、ファーストパーティデータからは顧客が実際に取った行動を把握できる
両者はどちらか一方を選んで使用するものではありません。組み合わせて活用することで、顧客が「何をしたか」だけでなく、「なぜそれを選んだのか」「何を求めているのか」まで理解しやすくなり、パーソナライゼーションの精度向上につながります。
顧客データを収集、活用する際の注意点
ゼロパーティデータとファーストパーティデータを扱う際は、日本の関係法令を確認し、顧客のプライバシーに配慮する必要があります。顧客データを収集、活用する際は、以下の点に注意しましょう。
- ゼロパーティデータを含む顧客データが、氏名やメールアドレスなどと結び付くことで特定の個人を識別できる場合は、個人情報として適切に取り扱う
- 収集する情報と利用目的をできる限り具体的に定め、取得方法に応じて顧客へ明示、通知または公表する
- 本人の同意を得た場合や法令上の例外を除き、利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱わない
- 個人データを第三者へ提供する場合は、法令上の例外を除き、事前に本人の同意を得る
- Cookie(クッキー)や端末識別子から得られる情報が、個人情報または個人関連情報に該当するか確認する
- アクセス権限の設定や不正アクセス対策など、データを安全に管理する仕組みを整える
- 利用目的や開示等の請求手続、苦情の申出先などを、プライバシーポリシーなどで本人が確認できる状態にする
- 広告宣伝メールには配信停止方法を表示し、受信拒否の通知を受けた場合は原則として配信を停止する
具体的な取扱いに迷った場合は、個人情報の取得や利用、第三者提供などに関するQ&Aを検索できる、個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドラインに関するQ&A」を参考にしてください。必要なデータだけを適切な方法で収集し、利用目的や管理方法を顧客に分かりやすく伝えることが、法令への対応だけでなく、企業に対する信頼の維持にもつながります。

ゼロパーティデータの使用例
顧客の希望に合った商品提案
商品診断やアンケートで、顧客が重視する条件を確認し、その回答に合った商品を提案できます。
例えば、アパレルECでは、希望するサイズや色だけでなく、着用場面、好みのシルエット、予算などを回答してもらいます。その情報をもとに候補を絞り込めば、顧客が数多くの商品を一つずつ比較する負担を減らせます。
化粧品ECでは、肌の悩み、好みの使用感、香りの有無、スキンケアにかけられる時間などを質問し、条件に合った商品や組み合わせを案内できます。単に売れ筋商品を表示するのではなく、顧客が重視する条件を商品提案や表示内容に反映することで、ECサイトのパーソナライズ化を進められます。
顧客の興味に合わせた情報配信
顧客に興味のあるカテゴリーや受け取りたい情報を選んでもらい、メールやLINEの配信内容を調整できます。
例えば、食品ECでは「新商品」「季節限定商品」「ギフト」「セール」などから、希望する情報を登録してもらいます。ギフト情報を希望する顧客には、お中元やお歳暮、母の日などの時期に合わせた商品を案内し、新商品に関心がある顧客には、発売情報や先行販売を知らせるといった使い分けが可能です。
配信内容だけでなく、メールやLINEなどの希望する連絡手段や配信頻度も選べるようにすれば、不要な案内を減らせます。顧客が後から設定を変更できるようにすることで、変化した興味や生活状況も施策に反映できます。必要な情報を適切な頻度で届けることは、顧客エンゲージメントの向上にも大きくつながります。
商品、サービスの改善
購入後のアンケートやフィードバックフォームを通じて、商品の満足度や改善してほしい点を収集し、商品開発やECサイトの改善に活用できます。
例えば、衣料品を購入した顧客に、サイズ感、着心地、生地の厚さ、商品画像と実物の色の違いなどを回答してもらいます。同じ意見が多く寄せられた場合は、商品説明やサイズ表、掲載画像を見直す判断材料になります。
また、購入時に迷った点や購入を断念しそうになった理由を聞くことで、送料、支払い方法、返品条件など、商品以外の課題も把握できます。回答を「商品」「配送」「決済」「サイトの使いやすさ」などに分類すれば、優先的に改善すべき箇所を特定しやすくなります。
顧客に合わせた特典、関連商品の提案
購入目的、予算、利用予定日、贈る相手などを回答してもらい、その内容に応じて特典や関連商品を提案できます。
例えば、ギフト目的の顧客には、用途や予算に合った商品とオプションをまとめて案内します。自宅用の顧客には、関連商品を組み合わせたパッケージやサブスクリプション(定期購入)プランを提案できます。
さらに、ロイヤルティプログラムと連携し、回答した興味や購入予定に合わせて、会員限定クーポン、先行販売、ポイント特典を提供することも可能です。顧客が求めるタイミングと条件に合わせて提案することで、利便性を高めながらアップセルやクロスセルにつなげられます。

ゼロパーティデータを活用できるShopifyの関連ツール
Shopify Forms(ショッピファイフォームズ)
Shopify Formsは、オンラインストアにポップアップフォームやページ内フォームを設置できる無料アプリです。好み、購入目的、予算、興味のある商品などを尋ねる項目を追加し、ゼロパーティデータを収集できます。
回答は、顧客情報に独自の項目を追加できる「メタフィールド」に保存し、購入履歴と関連付けて管理できます。例えば、ギフト目的と回答した顧客にタグを付け、関連商品を案内できます。クーポンの表示や担当者への通知、マーケティングメール、SMSマーケティングに関する同意取得にも対応しています。
顧客セグメント
Shopifyの顧客セグメントは、購入履歴や顧客情報などの条件に基づいて、顧客を自動的にグループ分けする機能です。条件に応じて顧客が自動で追加、除外されるため、リストを手作業で更新する手間を減らせます。
購入回数や利用金額のほか、顧客情報に追加した独自項目のゼロパーティデータも分類に使用できます。例えば、フォームの回答から「ギフトに関心がある顧客」「新商品情報を希望する顧客」などに分け、メールやクーポンの内容を調整できます。顧客の希望と購入履歴を組み合わせることで、施策の精度を高められます。
Shopify Flow(ショッピファイフロー)
Shopify Flowは、ストアや連携アプリで発生した出来事をきっかけに、設定した処理を自動で実行するツールです。きっかけ、条件、処理を組み合わせ、ゼロパーティデータの整理や施策への反映を効率化できます。
例えば、Shopify Formsで「ギフト目的」と回答した顧客へのタグ付けや、専用セグメントへの分類、特定の回答を受け取った際の担当者への通知を自動化できます。連携アプリによっては、条件に応じたメール配信にもつなげられます。データの見落としや対応のばらつきを防ぎ、リアルタイムパーソナライゼーションにも活用できます。
なお、Shopify Flowは日本でも利用できますが、アプリの操作画面は英語のみです。
まとめ
ゼロパーティデータの活用では、アンケートや商品診断などを通じて顧客の希望を収集し、その回答を商品提案や情報配信、商品、サービスの改善へ反映することが重要です。顧客が回答しやすい収集方法を選び、提供した情報がどのような体験につながるのかを分かりやすく示すことで、継続的なデータ提供も期待できます。
Shopify Formsや顧客セグメント、Shopify Flowなどを利用すれば、回答の収集から顧客の分類、施策への反映までを効率化できます。一方、データを扱う際は個人情報保護法などの法令を確認し、利用目的の明示や適切な安全管理に取り組む必要があります。
ゼロパーティデータとファーストパーティデータを組み合わせ、顧客の行動とその背景にある希望や意図の両方を捉えることが、より精度の高いマーケティングと顧客体験の向上につながります。
ゼロパーティデータに関するよくある質問
ゼロパーティデータとは?
ゼロパーティデータとは、顧客が企業やブランドに対して、意図的かつ自発的に提供する情報を指します。
ゼロパーティデータのデメリットは?
顧客が回答しなければ収集できないため、閲覧履歴などと比べて集められる情報量が限られる点です。また、質問数が多いと回答途中で離脱される可能性があります。収集する目的を明確にし、商品診断や特典など、回答するメリットを顧客に示すことが重要です。
ゼロパーティデータは個人情報に該当する?
ゼロパーティデータが個人情報に該当するかどうかは、情報の種類や管理方法によって異なります。顧客の好みや購入意向などの情報だけでは特定の個人を識別できず、ほかの情報とも容易に照合できない場合、個人情報には該当しません。一方、氏名やメールアドレス、会員IDなどと紐づき、特定の個人を識別できる場合は、個人情報に該当することがあります。
詳しい判断基準や具体例については、個人情報保護委員会が公開している「個人情報の保護に関する法律についてのガイドラインに関するQ&A」も参考にしてください。




