事業がうまくいかず、継続できなくなる原因は1つではありません。市場ニーズの見誤りや資金計画の甘さ、集客不足など、複数の要因が重なって行き詰まることがあります。事業の失敗を完全に防ぐことは難しいものの、よくある原因をあらかじめ知っておけば、避けやすくなるリスクもあります。
この記事では、事業が失敗するよくある原因と、その回避方法を説明します。
目次

1. 事業計画書を作らない
事業計画書は、事業の方向性や進め方などの全体像を明確にするうえでは欠かせない書類です。事業計画書を作らずにビジネスを始めると、何を売るのか、誰に売るのか、いくら必要なのか、いつ黒字化を目指すのかが曖昧なまま進みやすくなります。その結果、途中で方向性がズレてしまったり、想定外の出費や準備不足が後から見つかったりするおそれがあります。
こうした失敗を避けるためにも、商品やサービスの詳細、市場の状況、収支の見通し、販売方法、想定されるリスクなどをあらかじめ書き出しておきましょう。ただし、最初から細部まで固める必要はありません。まずは事業の全体像が見える計画を作っておき、実際の状況に合わせて更新していくことが大切です。
2. ビジネスアイデアを検証しない
ビジネスアイデアを十分に検証しないまま始めると、需要が限られたニッチ市場や競争の激しい分野に参入してしまい、思うように売り上げが伸びない原因になります。事業を始める前に、競合の数やレビュー件数、SNSでの反応などを確認し、市場にどれほどの需要があるかを見ておくことが必要です。自社が入り込める余地があるかを確かめたうえで進めることで、失敗の可能性を下げやすくなります。
3. ターゲット顧客を具体化していない
ターゲット顧客が曖昧なまま事業を進めると、商品説明や広告の訴求がぼやけ、誰にも強く響かない状態になりやすくなります。優れた商品やサービスであっても、誰にどんな価値を提供するのかが見えなければ、購入にはつながりにくくなります。
ターゲット顧客を考える際には、年齢や職業、年収、住所、生活スタイルなどをペルソナとして設計します。加えて、購入のきっかけや比較検討のポイント、よく使うSNS、情報収集の方法などの情報も把握できれば、どの媒体を活用し、何をどのように伝えるべきかをさらに明確にすることができます。顧客像が具体的になるほど、事業の失敗を防げるでしょう。

4. 売り上げの数字だけで判断する
売り上げが増えていても、手元にお金が残っているとは限りません。入金前に仕入れや広告費、人件費などの支払いが先に重なると、資金が不足することがあります。このキャッシュフローを見ていないと、商品は売れているのに経営が苦しい状態に陥りかねません。
こうした状態を引き起こさないためにも、月ごとの入出金の流れや、商品ごとの粗利を確認しながら進めることが大切です。売り上げの大きさだけでなく、実際にどれだけお金が残るかまで把握しておくことで、資金繰りの悪化を防ぎやすくなります。
5. 初期投資や固定費をかけすぎる
事業を始める段階で資金を使い過ぎてしまうと、売り上げが安定する前に支出の重さに耐えられなくなる場合があります。特に固定費は、売り上げが落ちても毎月発生します。想定より売れなかったときでも支払いが続くため、立ち上げ初期には負担になりがちです。高額な設備や内装費、家賃、長期契約のシステムなどを契約する際は、継続して支払いを続けられるかどうかを入念に考えておく必要があります。
立ち上げ初期の財政難を防ぐために、事業開始後の半年から1年ほどの運転資金を確保しておき、固定費はできるだけ抑えることが大切です。事業が軌道に乗り始めてから、設備投資などを徐々に増やしていくとよいでしょう。
6. 販売する商品やサービスが多すぎる
売り上げを伸ばしたいからといって商品やサービスを増やしすぎると、逆効果になる可能性があります。関連性の薄い商材まで扱い始めることで、自社の得意とするジャンルやUSPが分かりづらくなり、顧客から見える魅力が薄れてしまいます。
特に立ち上げ初期は、取り扱うアイテムを増やすのではなく、事業の軸に合った商品やサービスをブラッシュアップしていくほうが、強みが伝わりやすくなるでしょう。たとえば「環境にやさしいリサイクル素材の、おしゃれなバッグをたくさん揃えている」など、ニッチ商品でもイメージを築いておくことが、長く選ばれるブランドづくりにもつながります。

7. オーガニックマーケティングを活用しない
SEO対策やコンテンツによりユーザーの自然流入を増やすオーガニックマーケティングは、有料広告だけに頼らず見込み客との接点を増やしていく取り組みです。すぐに成果が出る方法ではありませんが、継続していくことで広告費を抑えつつ、検索やSNS経由で商品やサービスを知ってもらえる機会を増やせます。
たとえばSEO対策により検索結果の上位に表示されることで、継続的に見込み客の流入を見込みやすくなります。実際、safari digital(サファリデジタル)の調査(英語)によると、Googleの検索結果におけるクリックの約70%はオーガニック検索に集中しており、1ページ目の上位5件だけで全クリックの67.6%を占めています。
短期的な集客が必要な場面では、広告も有効です。ただ、広告を止めても集客がゼロにならない状態を作るには、検索やSNS経由の流入も育てておく必要があります。
8. マーケティング計画を策定していない
マーケティング計画を立てずに、事業を進めて失敗するケースも少なくありません。マーケティング計画がないまま事業を進めると、何のために施策を打つのかが曖昧になります。認知を増やしたいのか、問い合わせを増やしたいのか、リピート購入を増やしたいのかが決まっていなければ、施策ごとの優先順位も定まりません。
広告やSNS、メールなど、使える手段は多くありますが、目的や予算配分、KPIなどの指標が決まっていなければ、場当たり的な運用になりやすくなります。結果として、手間をかけても成果につながりにくくなるでしょう。
9. 無料プレゼントやキャンペーンを設計せずに実施する
無料プレゼントやキャンペーンは集客のきっかけになりますが、必要なコストや投資利益率(ROI)、取り扱う商品との相性を事前にシミュレーションしておく必要があります。一時的に人が集まるだけではなく、そのあと購入やリピートにつながることが重要な施策です。
試したあとに継続購入されやすい食品や化粧品、消耗品などは相性がよい一方で、購入頻度が低い商品や一度買えば長く使える商品は、キャンペーン後の売り上げにつながりづらい場合があります。集客数だけでなく、購入率や継続率まで見据えて、プレゼントやキャンペーンを設計することが大切です。

10. 一人で業務を抱え込む
起業したばかりの時期は特に、少人数体制のためウェブサイトの作成や商品登録、説明文の作成、集客といったさまざまな業務を経営者が1人でこなそうとしがちです。一方で、新しいビジネスアイデアの企画や取引先との関係づくりといった、さらに重要な業務に時間をかけることも大切です。
データ入力のような必要な単純作業は、外注や自動化で負担を減らすことができます。また、ロゴやボタンの微調整などは、立ち上げ初期では優先度は高くないため最小限に留め、時間をかけすぎないようしましょう。事業を成長させるには一人で抱え込まず、フリーランスや従業員の採用、生産性向上ツールの導入も視野に入れてみましょう。
11. 共同創業者や経営層の対立を放置する
共同創業者や経営層の関係が悪いまま事業を続けると、意思決定が遅れたり、現場に混乱が広がったりします。役割分担や責任範囲、報酬などが曖昧なままだと、重要な場面で対立が起こる可能性もあります。
トラブルを防ぐには、関係性がよいうちから、役割や権限、合意の取り方を明文化しておくことが重要です。違和感が出た段階で話し合いの場を持ち、早期解決に努めましょう。
12. 事業拡大を急ぎすぎる
十分な準備が整わないまま事業を拡大すると、現場が回らなくなることがあります。従業員の採用や教育、在庫管理、品質管理、顧客対応など、売り上げ以外に増える負担は少なくありません。
たとえば、店舗や販路を増やしても、人材育成や運営体制が追いつかなければ、サービスの質が下がったり、クレームが増えたりすることがあります。今の事業が安定して回っているか、増えた業務を処理できる体制があるかを確認したうえで、事業を拡大するかどうか判断することが求められます。
13. 知的財産の管理が不十分
知的財産の保護や登録が行われないまま事業を進めると、自社の商品名やロゴ、デザインを他社に使われてしまうといったリスクが生まれます。反対に、他社の権利を知らずに侵害してしまい、使用の差し止めや損害賠償などのトラブルにつながることもあります。
知的財産とは、商品名やロゴ、デザイン、技術、コンテンツなど、事業における価値を持つ無形資産のことです。商品名やブランド名は、事業を始める段階で重複がないかを確認し、必要に応じて商標登録を検討しましょう。自社の名前やロゴ、商品名、独自の技術など、守るべき財産を適切に保護しておくことで、将来的に起こり得るトラブルの予防につながります。

14. 社会情勢や法規制の変化に対応できない
消費者の行動や原材料費、物流、法改正などに対応できないと、それまで問題なく回っていた事業でも急に厳しくなることがあります。たとえば、個人情報保護や表示ルール、許認可の条件などが変わると、従来のやり方を見直さなければならない場合があります。変更に気づかず対応が遅れてしまうと、販売停止や信用低下につながることもあるため、注意しなければなりません。
こうしたリスクを回避するために、法改正や業界情報、市場の動きを日頃から確認し、迅速に対策を講じるようにしましょう。
15. 流行だけを追ってしまう
「トレンドだから」と短期的な人気を頼りに市場に参入すると、ブームが落ち着いたあとに売り上げが急減するおそれがあります。流行している市場には競合も集まり、価格競争が起こりやすくなります。
事業として続けるには、一時的な話題性だけでなく、半年後や1年後にも需要があるかを見極めることが大切です。流行を取り入れる場合は、次に売るものや別の収益源まで考えておくと、失敗のリスクを抑えやすくなります。
まとめ
事業の失敗を防ぐには、さまざまなリスクを知っておき、対策を準備しておくことが大切です。
ビジネスを本格的に始める前には、アイデアや顧客ニーズをじっくり検証して、事業計画を立ててから臨みましょう。自社の強みを発揮できるようにしながら、マーケティングも計画的に行っていく必要があります。
とはいえ、リスクをおそれすぎる必要はありません。今回紹介したよくある失敗例を参考に危険な兆候を事前に捉えることができれば、きっとチャンスをつかむことができるでしょう。
事業失敗に関するよくある質問
新規事業が失敗する原因とは?
- 市場や顧客のニーズの確認不足
- 資金計画や集客戦略が不十分
- 共同創業者や経営層の対立
- 社会情勢や法規制の変化
事業失敗の借金で自己破産になる可能性は?
事業に失敗した場合でも、必ずしも借金や自己破産に至るわけではありません。ただし、個人事業主である場合や、法人でも経営者個人が連帯保証をしている場合は、事業の借入が個人の返済負担につながることがあります。
事業や経営の失敗事例は?
ファーストリテイリングは生鮮野菜の生産・販売事業「SKIP」を始めましたが、運営ノウハウが足りず欠品が続いた結果、利用者の満足度が上がらず、短期間で撤退に追い込まれました。
また、AOKIはスーツのサブスク事業「suitsbox」で、スーツにお金をかけたくない若年層を狙いましたが、実際に集まったのはスーツをよく買う40代でした。狙った層と利用者がずれたうえ、品ぞろえやコーデ提案の運営コストも膨らみ、半年で終了しました。
文:Yukihiro Kawata





